よしもとばななが描く「妊娠」の世界「イルカ」の考え方が興味深い

イルカ (文春文庫)

よしもとばななさんが妊娠をテーマに描いた
「イルカ」という小説が興味深かったのでご紹介します。

◆あらすじ◆

恋人と初めて結ばれたあと、
東京を離れ、
傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。

外の世界から切り離された、
忙しくも静かな生活。

その後訪れた別荘で、
キミコは自分が妊娠していることを
思いがけない人物から告げられる。

まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、
やさしく、繊細に描いた長編小説。
(文庫版裏面より引用)

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よしもとばななさんの小説は、
「つぐみ」、「とかげ」しか読んだことなかったので、
こんなことを言うとファンの方に怒られてしまうかもしれませんが、
今回もよしもとばななさんらしい表現が光っています。

まず、主人公がインフルエンザにかかったところから
物語は始まるのですが、
インフルエンザからの回復過程も、
よしもとばななさんの手にかかればこんな感じです。

 インフルエンザは楽しいものではなかったけれど、その回復の過程はますます楽しさを増した。きしむところにじょじょに油が差されて動きがなめらかになるのがわかるようだった。呼吸は次第に楽になり、たくさんの酸素が体に入ってくる。食べ物の味がちゃんとしてきて、なんでもおいしく深く感じられる。
「イルカ」22ページより引用

主人公キミコが妊娠した子どもの父親は、
ユキコさんという内縁の妻的存在の人がいる男・五郎。

そう考えるとその設定だけで悲壮感漂う、と言うか、
ひと波乱ありそうな設定ですが、
不思議と登場人物の中に悪人がいないので、
安心して読み進められます。

キミコも妊娠した喜びこそあれ、
結婚を望んでいない人物ですしね(笑)

序盤がなかなか読み進められなかったのですが、
中盤キミコが妊娠しているのがわかった辺りから面白くなります。

私も一昨年出産を経験しましたが、
自分と胎児が一体化している間隔、
そして出産したら別々の存在になる不思議さ、
そんな命の不思議が美しい文章で綴られています。

最後に、私がこの本で好きだと思った文章を引用して、
終わりにしたいと思います。

 そして私は、出産と死もそれと同じだと今では確信していた。
死ぬということは、ぴんぴんと生きているあいだに考えるととても異様なことに思えるしこわいけれど、近づいてくると案外、体ごとその次元に入ってしまうのだと思う。そのときの自分にまかせれば間違いないと思えた。
「イルカ」232ページより引用

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